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所属弁護士の声

2008.11.29

判例合宿(弁護士 工藤 洋治)

 深秋のとある週末、当事務所における恒例行事の一つ、「判例合宿」が開催されました。

 当事務所では、1ヶ月に1回のペースで「判例研究会」なる勉強会を開催しています。これは、毎回、発表担当者を決め、その担当者が、近時の最高裁判例の中から題材を選び、事案の概要、第1審・控訴審・最高裁の各判決内容、学説の状況、当該判例の射程等をまとめたレジュメを事前に配付して、当日はそれをもとに担当者が発表を行った後、皆で質疑応答や議論をするというもので、これまでの開催回数は100回を超えています。「判例研究会」は、1回の所要時間が2時間~2時間半、発表担当者は10~20ページ程度のレジュメを準備するのが通例です。

この「判例研究会」の、いわば拡大バージョンとして、概ね2年に1回のペースで、「判例合宿」が開催されます。朝早く電車に乗って温泉地に向かい(当然、事務所旅行のときとは異なり、行きの電車の中から「乾杯!」というわけにはいきません。)、午前のうちに宿に到着、お昼ご飯を食べる前にさっそく勉強会が開始されます。

普段の「判例研究会」では、1人の担当者が発表を行い、じっくり時間をかけて議論し尽くすのに対し、「判例合宿」では、発表担当者は10人強で、それぞれが題材を選んで発表をすることになっていますから、「判例研究会」と同じようなやり方だと到底1日では終わりません。そこで、「判例合宿」では、担当者1人あたりの割当て時間は質疑応答や議論の時間も含めて30分、レジュメの枚数は4ページ以内というルールが定められています。また、争点が多岐にわたる判例や事実関係が複雑な判例を題材として選択すると、担当者の発表後、議論が大いに盛り上がり始めて「さあこれから!」というときに、「時間が来たので次の発表に」ということになり、皆の欲求不満を溜める結果となってしまいます。そこで、題材として選ぶ判例も、コンパクトな発表に馴染むようなものを、ということになっています。

そうは言っても、いざ発表が始まると、各発表ごとに白熱した議論が交わされ、いきおい、それぞれの所要時間は、予定時間である30分をオーバーしがちです。進行役の先生の「盛り上がっているところ申し訳ありませんが、そろそろこの辺りで次の発表に・・・。」という言葉に押されて、結局、皆が若干の欲求不満を残しながら、順次、発表が続いていくことになります。自分が発表をする順番のときは、当然、緊張します。事前の準備が甘いと、他の先生からの鋭い質問に往生することになりますから、当該判例の評釈や基本書の関連箇所等を十分読み込んでおくのですが、それでも、必ずと言ってよいほど、予想外の質問を受け、冷や汗をかくことになります。

ようやく全員の発表が終わると、温泉に入って、頭の疲れを癒します(といっても、勉強会終了が予定時刻を大幅に超過した関係上、やや急ぎながら温泉を堪能することになります。)。温泉からあがると、宴会です。ここでようやく「乾杯!」。途中、順番に本日の反省や近況報告を述べたりしながら、美味しい料理や地酒などを楽しみます。1次会終了後は場所を変えて飲み直し、2次会・3次会・・・。最後は若手だけが残って、いつの間にか明け方近くに・・・。それでも翌日は元気に早起きして、ゴルフや付近の散策等、思い思いの時間を過ごすことになります。

判例研究会や判例合宿には、近時の判例についての知識を得たり、自分が興味を持った判例について深く研究する機会となるといった意義があります。しかし、それにとどまらず、他の先生方との質疑応答や議論を通じて、自分では思いもよらなかった視点や切り口に気付かされ、それを契機に自分の考えもまた深まる(さらにそれを発言すると、議論がいっそう深まっていく)というところに、非常に大きな意義があると感じています。また、こうした勉強会の場において、分け隔てなく、自由闊達な議論をするところに、当事務所に良さがあるのではないかと思っております。 今後も、こうした場を生かして、弁護士としての自らの研鑽にいっそう努めてまいりたいと考えております。

(平成20年11月記)